自然循環型の太陽熱温水器は多少複雑な構造をしています。
一般的な構造で安価なものは、タンク一体型のものです。
【長府製作所】
上部に保温材で覆われたタンクがあり、その下に集熱パネルがあります。
集熱パネルで温められた温水が、対流によって上部のタンクに貯められます。
タンクは保温されていますが集熱パネルは保温されていないので、外気温が下がると今度は逆に、集熱パネルから放熱されてしまうことになります(一部製品を除く)。
集熱と放熱の関係や、パネルの大きさ、厚さ、タンクの大きさなどから、効率よく集熱するノウハウが各社にあると思っています。
給湯、給水の仕組みは以下の通りです。
【集熱パネルは描かれていません】
【集熱パネルは描かれていません】
給湯バルブを開くと温水が流れていきます。(落下していきます)
タンク内の水面が下降すると、タンク内のフロート(浮き)が下がり、給水されます。
タンク内の水量はほぼ一定に保たれます。
今度は給湯バルブを閉めるとタンク内の水面が上がり、それに従いフロートも上がるので給水バルブが閉まり、水の流れは止まります。
タンクと集熱パネルには水道の圧力は一切かかりません。
この方法だと穏やかに水が押し出されるので、温水と冷水が混ざりにくいという利点があります。
上記の場合は、給湯用ホースと給水用ホースの二本を用いていますが、給湯、給水両方を兼ねた一本のホースで構成することもできます。
まずはタンク内に水をいっぱいになるまで入れます。
そして太陽熱によって温水になるまで待ちます。
今度は給水に使ったホースを給湯用に使います。
こうすることで冷たい水が混ざることなく最後まで温水を使うことができます。
問題点といえば、
・水の出し入れによる重量の変化があるため、屋根によくないかもしれない(私の感想)。
・給水時に水が一杯になるまで気を付けて見ておかなくてはならない。
しかしこれらを自動で行ってくれるものもあるので心配はいりません。
【株式会社寺田鉄工所】
もしフロートを取り去り、この集熱パネルに水道パイプを直接つなげると、タンク内にも集熱パネルにも水道の圧力がそのままかかってしまい、パネルの接合部から水漏れを起こすおそれがあります。
問題はタンクではなく、集熱パネルと接合部の作りにあるのです。
水漏れしないような強固な接続にすると、重さやコスト面で不利になるために敢えて製作しないようです。
一部メーカーでは水道の圧力がそのまま使えますよ、といっているものもありますが、このタイプはお風呂のみとか、台所のみなどに用途が限定されます。
ここは根本的な理解をしていないと勘違いをしてしまいます。
給水側でコントロールするか、給湯側でコントロールするかによって、タンクや集熱パネル内にかかる圧力の違いを理解しておかなくてはなりません。
【給湯側でコントロール → タンクや集熱パネルに
水道の圧力がかかる】
【給水側でコントロール → タンクや集熱パネルには
水道の圧力がかからない】
(以前に私が作った塩ビパイプの太陽熱温水器はこのタイプです)
センサーなどを使い、給湯使用箇所を限定されないようにできないこともないのですが、使いたいお湯の蛇口をひねればよいとは簡単にはいきません。
ここを工夫したり、利用できるようにする既製品を買うくらいなら、水道直圧型を購入した方がいいです。
もっと大きな集熱パネルを使いたい場合は、タンク分離型を選びます。
【株式会社ホクレア・システムズ】
タンクの中の水(不凍液など)と集熱パネルの中の水はつながっていません。
集熱パネルの中の水はぐるぐると循環するだけです。
途中、タンクのパイプにも循環するので、そこで熱の受け渡しをします。
これだと水道の圧力は集熱パネルにはかからないので大丈夫です。
しかし小規模だと割高になってしまうので、主に施設などの大規模温水器に利用されています。
次は水道直圧型太陽熱温水器についてです。
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