この蕎麦は、何年も世代交代を繰り返しているのですが、種の保存だけで、一度も人の口に入ったことはありません。
その理由は二つあります。
一つ目は、粉に挽くための道具がなく、せっかく収穫して実だけにしても今の現状からは、そこから食べられるようにするための加工ができないのです。
細かい作業はいろいろとありますが、大きな流れとして、とりあえずは実の皮を取り除かなくてはなりません。そしてその実を粉に挽くのです。
皮を取り除くための機械があるようですが、大がかりになりそうです。粉に挽くのは石臼があればいいのですが、これも購入すると高価です。
裏庭に石臼の臼の部分が、何種類も転がっていたりするので、集めてきて組み合わせれば使えるかもしれません。
蕎麦の栽培自体は難しくはありません。種を蒔いておけばいいのですから。しかも荒れた土地でも栽培可能なのです。というよりは、サツマイモ同様、救荒作物のひとつです。
夏蕎麦と秋蕎麦がありますが、稲作との関係で、私の周りでは、秋蕎麦が多く栽培されています。一斉に花が咲くとまるで畑が白い絨毯のようです。この頃、ミツバチに蜜を集めさせます。蕎麦のコクのある香りがします。
しかし難しいのは、製粉してソバに打つときです。ソバはあんなに簡単な素材と作り方なのに、調べれば調べるほど奥が深いことが分かってきます。
確かにうまいソバを食べると、これなら少々高くても仕方ないなと納得してしまいます。つなぎを入れない十割蕎麦、つなぎを入れる割合によって二八蕎麦などがありますが、店によって味が違うので、つなぎの割合もこれがいいとは断定できません。
製粉前の実の大きさの選別から、磨き、皮取り、選別、粉挽き、しかも挽くときの臼の回転数や、粉の選別など、人によってノウハウにかなりの違いもあるようです。
二つ目は、耕地面積が少なく、これ以上蕎麦を栽培する面積を増やせないことです。
今の収量では、粉にするには少なすぎます。種にする分も取っておかなくてはならないのですから。増やそうとすると、大豆の作付け面積を減らさなくてはなりません。しかしこれ以上は減らすことはできません。逆にまだ増やしたいくらいなのです。
ということで、しばらくは種の保存という貴重な仕事だけになる予定です。
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